「葵って天然なのか計算なのか、わっかんない…」
「なにが?」
言っている意味が分からず聞き返すが、なんでもないよとはぐらかされてしまう。

椅子に座ってきょとんとする葵を見下ろし、小夜は思わず苦笑した。
「そういうところが罪なんだよね、葵って」
「罪って…私懲役何年だ。罰受けるのか」
怯えたように言う葵に、小夜は笑いをこらえた。

「面白いってことだよ。佐島とも話してみたらいいのに、絶対葵のこと気に入ると思う」
あいつ私とちょっと似てるの、と言った小夜に、葵は首を振った。

「いいよ。佐島、あんまり人に干渉されるの好きじゃない気がするし」
「…そう?よく見てるね」
今度は、葵が赤くなる番だった。

「とにかく。佐島にとって私は話したことも全然ない知り合いっていうかクラスメイトの一人なだけだから、話しかけても迷惑だよ」
また卑屈になる、と小夜は顔をしかめた。

小夜の整った顔は、そんなふうに表情を豊かに変えても魅力的だ。