誰かが消えてしまっても、そして私が消えてしまっても、廻っていける世界が憎い。

笑えるくらい空っぽな自分が哀しい。

「悔しいよ。悔しいのに。私じゃ」

無理だ、という言葉をどうしても口に出来なかった。

目にたまった涙が溢れないように瞬きを止めていると、大和が静かな声で言った。

「その気持ちを書けばいいんじゃない」
「…え?」
予想外の言葉に目を丸くしていると、いつの間にか涙が止まっていたのに気がついた。

「大丈夫じゃないだろ。今。なら、大丈夫かとは言わないし、気休めの慰めも言えない。お前が解決することだから」

「…うん」
その通りだ、と声がつまった。

「でもさ」

かけられた言葉に、力がこもっているのがわかった。

「お前みたいに思っている奴、少なくないと思う。そういう奴の心も、救うことは出来ないけど照らすことくらいは出来るんじゃないか」