MEMORIZE BLUE

甘かった。

教室のドアの前で立ち尽くした葵は、入ることも去ることも出来ずにいた。

アイドルのように格好いい転校生が来たなんて噂になったら、こうなるに決まっていたのだ。

教室の中に大和を中心に、女子や気さくな男子が群れていた。

その中に入る勇気などさらさらないのに、どうして楽観視して物を渡そうなどと考えたのだろう。目立たないことが第一だったはずなのに、そんなことを見落とすなんて。

(きっと、昨日あいつの馬鹿さに当てられたんだ)

そう無理矢理自分を納得させると、葵は静かに席についた。

「大和君、頭良いとこにいたんだ!だから転入試験も楽にパス出来たんだね」

「特技は?バスケか、格好いい〜」

うつ伏せて寝ようと思っても、黄色い声が耳に入って五月蝿い。いちいちそれを気にしてしまう自分が更に辛い。

なんで顔がいいだけで人が集まるのだろう。

不公平だ、と毒づくのは言い訳だ。

話しかける努力もせずに、自然に話しかけられる人を妬んでいるだけなのを知っていて、誤魔化している卑怯者。

何より自分が解っているから、対極にある大和に腹が立った。