「ごめん!」

「えっ」

言ってから思い切り頭を下げた小夜に、どう言えばいいのか狼狽する。

「やめてよ小夜」

もういいって、と言うと小夜は恐る恐るといったふうに顔を上げた。申し訳なさそうな表情をさせることにこちらが申し訳なくなる。

「違うの」
「何が…」
聞き返そうとした葵は、何かに気がついたように言葉を飲んだ。

「ごめんなさい…」

ひたすら深く頭を下げた小夜の言いたいことが分かった。

予感していた自分を、心のどこかで悟っていて、何の感情も沸いてこないことを静かに受け入れる。

「大丈夫だよ」

何が大丈夫かも分からないのに笑ってそう言うと、小夜は泣きそうな顔をした。

「好きになっちゃった。佐島のこと」
「……うん」

わかってた。
きっと、どこかで。