MEMORIZE BLUE

ふと三上を見ると、指揮棒を握る力が、悔しそうに強くなったのが分かった。

それに奮い立たされた葵は、息を吸いこんだ。

「はい、じゃあ集中力切れてきたみたいだから今日はここでお終いな」

しかし、その趣旨の言葉を言ったのは葵でなかった。

「佐島」
表に出さないように努めてはいるが、やはりほっとした顔になった三上を見て、来てくれてよかったと心底思った。

しかし、佐島の現れた教室の後ろのドアの影に小夜がいるのを見て戸惑う。

ついさっきまで一緒に練習していたはずなのに。

そんな様子を見て取ったのか、小夜は小走りで三列目の端にいた葵の元に駆け寄った。

「さっき、呼びに行ったの」
「そうなんだ…」
返した言葉が浮いているようで、気まずさに葵は目を逸らした。