「……佐島から………ん、えっ」

何も考えず呟いた葵は、しばらくして頭の中にその意味が染み込むように理解して、思わず声を出した。

なぜ。
動揺しながら文面を目で追うと、合唱コン係としての挨拶だと分かって、安堵と残念な気持ちのないまぜになった何かが波となって打ち寄せた。

『合唱コンの取りまとめ係の佐島です。よろしく。早速だけど入れたい言葉とかある?』

淡々とした文型だが、メールが来たのが嬉しくて胸の奥がじわりとした。

(入れたい言葉…)
考えながら思いつくのは、どこかで聞いたことのあるようなフレーズしかない。

仕方なく、葵はそれを送った。

『未完成な僕ら、翼、空に描く夢、とか?』

我ながら呆れるほどに文才がない。
後悔していると、また手の中で携帯が震え、びくっとする。

恐る恐るメールをチェックすると、驚くような内容に目を瞠った。

『透明な空に描いた夢の続き
まだ未完成な僕らの歌で
繋いだ翼でエールを送ろう

適当に描いてみたけどこんな雰囲気の歌詞が好きなの?』