そう言うだけで一歩を踏み出さないくせに、今だって理論ぶった考えに浸って自分も誤魔化して。

考えているうちに泣きたくなって、かたく目を瞑った。
「葵?」
心配そうな声に、顔があげられない。

馬鹿みたいな私。
本当に苛つく私。
でも、変わりたいと思うほどには腐りきってはいないはずなんだ。
遅くないはずだから。

「小夜、私、立候補する」
息を吸い込んだ私の言葉に、一瞬驚いた小夜だが、すぐに「言うって信じてた」と笑った。

「もう夏だねー⋯⋯」
「うん」
眩しそうに空を見上げた小夜に、いつか肩を並べられる自分になりたいと願った。