しかし課長は、そんな心の狭い人じゃなかった。

「じゃあ…お願いしようかな」

と、にっこり微笑んでくれたのだ。

「え、いいんですか?」

断られると思ったから、提案した私がビックリして聞き返してしまった。

「いいんですか、って、中条が言い出したんじゃないか」

そんな私を見て、課長がプッと吹き出す。

「あ、そうなんですけど、断られると思ってたんで」

和矢には嫌がられてたから、課長も嫌かなと思ったんだけど違った。

「実は俺、家事の中でも洗濯って苦手なんだ」

「えっ」

「いい歳したオッサンの一人暮らしで洗濯が苦手とか恥ずかしいが、正直ありがたい」

課長が少し照れ臭そうに笑う。

意外な一面をまた知ってしまった。

何でもソツなくこなす様に見えて洗濯が苦手なんて。

その恥じらう姿も相まって、なんて母性をくすぐるのでしょうか。

「あの、じゃあ、これからお世話になるので、洗濯は私がやりましょうか?」

おずおずとそう申し出ると、課長の顔がパァァァっと明るくなった様に見えた。

余程イヤなんだな。

「ほ、本当か?」

「はい。私、洗濯好きですし」

「そ、そうか!ありがとう!任せるよ!じゃあ、風呂に入って来ようかな」

「はい」

そう頷くと、課長はルンルンと浴室に入って行った。

良かった。

お世話になるのに何もしないと言う訳にいかなかったから、こちらとしては逆にありがたい。


サァァァァ――と、シャワーの音が聞こえ始めたので、

「よし!課長がお風呂に入ってる内に洗濯機を回しちゃおう!」

と私は腕まくりをする。

私はとりあえず持って来た荷物を部屋に運び、部屋着に着替えて洗濯に取り掛かった。