たまたま通りかかったなんて嘘ついて、だけどあっさりバレて。

めっちゃ恥ずかしい!

「……はい」

恥ずかしさのあまりうつむいた顔を上げられない。

すると、目の前で立ち止まった課長の温かい掌が、私の頭を撫でた。

(え?)

また昼間の様に暴走するんじゃないかと思って慌てて顔を上げる。

だけど、課長は優しく微笑んでいるだけだった。

「あ、あの」

「ん?」

「いえ、なんでも……」

「そうか?」

「はい」

「じゃあ、帰ろうか」

「はい……」

私たちは並んで歩き出す。

横目で課長を見ると、至って普通。

昼間の様に呼吸が乱れたり、興奮している様子はない。

(なんだ)

そんな課長を見て、私はガッカリと肩を落とした。

(ん?なんでガッカリ?)

こんな人がいっぱいいる状態で昼間の様になったら、大変なのに。

何故か、そうなって欲しかった自分もいる。

(んん~?)

自分の感情がよく分からない。

「どうした?」

数歩先を歩いていた課長が振り向いた。

「あ、いえ、なんでもないです」

「そうか?」

「はい」

タタッと小走りで課長元へ駆け寄った。