「ごちそうさま」

「はい。おそまつさまでした」

今日のお弁当は本当にお粗末だった。

でも千歳は綺麗に全部平らげてくれた。

それだけで、なんだか満たされるモノがある。

「合コンでもすっか」

また千歳が、突拍子もない事を言い出す。

危うく飲んでいたお茶を吹き出す所だった。

「はい?なに?急に」

「いや、新しい出会いが必要かな?と思って」

「ああ、なるほど」

「うん。どう?」

「んー。しばらくは良いかなぁ」

「そう?」

「うん」

「そっか」

「ありがとね」

「うん」

サワサワサワ―――。

風が本当に心地いい。

(午後の仕事なんてサボって、このままここで寝たいな)

そう思って、ふと気が付く。

「てか、千歳は合コンなんて行ったらダメでしょう」

「え、なんで?」

「なんでって」

コイツ、自分がモテるって事を分かっとらんのか?

そんなんで合コンなんて行ったら、彼氏のケンさんが心配するでしょうが。

そう言ったら、

「ああ、そうだねぇ」

と、気の抜けた返事が返って来た。

「ケンさんに同情するわ……」

これじゃ、心配になるケンさんの気持ちも分かる。

(ケンさん、ご愁傷さまです)

胸の前で両手を合わせる。

頭の中で、チーンと言う音が響いた。

「なにやってんの?ホラ、お昼休み終わっちゃうよ」

「あ、はいはい」

私は急いでお弁当箱を片付け、先に歩き出した千歳の元へ小走りで寄った。