「おじゃましました」

トントンっと靴を履き慣らし、私は深々とお辞儀をした。

「本当に送って行かなくて良いのか?」

課長が心配そうな顔をして私を見ている。

「はい、距離もそんなに離れていないし、歩いて帰りたい気分なんで」

「そうか。じゃあ、気を付けて帰れよ」

「はい。ありがとうございます。ご飯も、ごちそうさまでした」

私はもう一度頭を下げた。

カシャン――。

「あ」

頭を下げた勢いでカバンの中から家の鍵が落ちてしまった。

拾い上げて立ち上がろうとした瞬間、スカートを踏んでしまい、ツンっと足が引っかかって前のめりにコケそうになった。

「わっ――」

「危ないっ」

あ、やった…と覚悟したけど、顔面強打の寸前で課長が抱き留めてくれる。

私はその時、気が付いてしまった。