しょうがないな、と千歳がため息を吐く。

「私とケンが大学違うのは知ってるでしょ?」

「うん。確かケンさんは県外の大学に通ってたよね?超頭の良い」

「そ。それで一回揉めたの」

「なんで?」

「遠距離恋愛になっちゃうじゃない?寂しい、って駄々こねたの」

「千歳が?」

「違う。ケンが」

「は?」

「ケンが『離れたら絶対に他に好きな奴が現れる!オレは捨てられるんだ!』って」

「……で?」

「じゃあ別れるか、ってアタシが怒ったら『イヤだ』って号泣してた」

「……いや、のろけかよ!しょーもなっ!聞いて損したわ!てかケンさんがそんな人だったなんてそっちのがビックリだわ!」

私はテーブルをペンっと叩いた。

ケンさんには何度か会っているけど、すごく穏やかで真面目な印象で、おおよそそんな事を言い出す様な人には見えなかった。

人は見かけによらない、ってこう言う事なんだね。

「だからしょうもない話って言ったじゃん」

「しょうもな過ぎたー!」

「アンタ、さっきから失礼じゃない?」

ちょっと不機嫌な千歳をよそに、私は運ばれて来たビールをまた一気に飲み干す。