「あ……」

パンケーキを食べ終えオレンジジュースで一息付いていると、千歳が何かに気付いたように私の後ろを指さした。

「え?」

指さされた方を振り向くと、そこには淳一さんの姿。

「え?なんで?どうしたんですか?」

突然の登場に、私は頭を傾げる。

なんでここにいるの?

「あー……ちょっとその辺をブラブラしていた……」

頭をポリポリ掻きながら、淳一さんがちょっとバツが悪そうな顔をしている。

「はあ……そうですか」

と、私がよく分かっていない様な返事を返すと、千歳に「ちょっと……」と肩を叩かれた。

「え?なに?」

叩かれた肩を押さえながら千歳を見ると、「え、マジか……」と言う顔をされた。

「課長、心配してあんたを迎えに来てくれたんでしょ」

とコソッと耳打ちされ、え、と思った。

私はそんな事頼んでないし、淳一さんもそんな事一言も言ってなかった。

「でも、これから一緒に買い物……」

「そんなん今度で良いから、課長と一緒に帰りな」

「え~、そんなぁ……」

今日はお気に入りのお店で優待セールをやっていてめちゃめちゃ楽しみにしてたのに……。

なかなか動かないでいる私に、千歳がバッグを押し付けて、ホラッ!と急かす。

昨日、淳一さんにもあんなに楽しみにしてるって言っておいたのに。

私は肩を落として恨みがましく淳一さんを睨んだ。

一言文句を言おうと思ったけど、テレテレニコニコしている淳一さんを見たら、更に肩の力が抜けてしまった。

「……はぁ」

押し付けられたバッグを肩にかけ、「ごめんね。じゃあお先に」と千歳に声を掛けてカフェを出た。

振り向いて千歳を見ると、微笑みながら手を振っているので、私も手を振った。