身代わりペット

「ふ~ん。課長が迫田課長をねぇ」

「うん……」

いつものカフェ。いつものテラス席。

私と千歳はランチを食べに来ていた。

今日は休日だから学生や家族連れが沢山いて、お店の中は結構ごった返している。

先程から国枝さんがパタパタ走り回っていた。

「寝言かぁ」

「普通、なんとも思ってない人の夢なんて見ないでしょ?しかも寝言で名前呼ぶって相当じゃない?」

「う~ん。でも夢って、直前まで考えてた事を見やすいって言うからねぇ。ルイちゃんの命日でそれ関連の事を思い出していただけかもしれないよ?迫田課長は幼馴染でお互いの家を行き来する間柄だったんでしょ?そしたらルイちゃんの思い出に居てもおかしくはないし」

「そうなんだけどさ……」

千歳の言う事にも一理ある。

前にテレビで、「目当ての夢を見たい場合、寝る30分くらい前からその事を強く思っていると見やすくなる」って聞いた事がある。

「聞いてみれば良かったじゃない」

「え、何を?」

「迫田課長の事が好きなんですか?って」

「いや~……それはちょっと……」

あの後、私は何とか課長を膝枕から下ろし、自分の部屋に戻った。

戻った後にずっと考えて、このままモヤモヤしたままだと嫌だったから課長に聞いてみようと思ったんだけど、課長の口からハッキリ「愛実の事が好き」と言われたらもう一生立ち直れない様な気がして、どうしても聞けなかった。

だからなんとなく、課長を避けている。