「えっ!?課長!?」

驚いて肩を揺すって声を掛けると、

「うう~ん……」

と言うだけだった。

テーブルに置かれているワインボトルを見ると空になっていて、グラスにも残っていない。

私はまだ最初に注いで貰った一杯を飲み切っていないから、私がグルグル考えている内に残りを全部課長が飲んでしまったのだろう。

「酔って寝ちゃっただけか……」

普段はこんな量では酔わない課長。

(日頃の疲れとペットロスの疲弊で酔いが回ってしまったのかな?)

ふぅ、と息を吐いて、寝てしまった課長の顔を眺める。

「整った綺麗な顔……」

無防備に晒されているほっぺをツンツンと突いた。

やっぱり「うう~ん」と言うだけで、起きる気配がない。

このまま寝かせてあげたいけど、ずっとこのままじゃ私が辛い。

「課長?起きて下さい。寝るなら部屋に戻ってベッドで寝ましょう?」

肩をポンポンと叩くと、ボソッと何かを呟いた気がして口元に耳を近付ける。

「ん~……ルイ…こっちに、おいで……」

どうやらルイちゃんの夢を見ている様で、ルイちゃんの名前を呼んでいた。

「ホント、ルイちゃんの事大好きだなぁ」

「う~ん……ムニャ…」

その後も、続けて何かを言っているので聞いてみる。

「え――?」

私はパッと顔を離し、寝ている課長の顔を凝視した。

「今……『メグミ』って言った……?」