「とりあえず、家を早く探さないとなぁ」

ボソッと呟いたら千歳が、「逃げ道作っとくの?」と言って来た。


……図星だった。


「だってさ、ダメだった時に一緒に住んでるって辛くないです??」

「まあ、そうだね」

「じゃあ逃げ道作っといた方がいいじゃん?」

「アテはあるの?」

「……ない」

「どうすんの?」

「どうしよう」

別に逃げ道にだけ使うって訳じゃなく、どのみち課長の家からは出て行かなきゃならないんだし、部屋は探さなきゃいけない。

でも予算とか立地とか、今すぐには難しそうで。

「じゃあ……もしダメだったらしばらくウチに居たら?」

「え……」

千歳の突然の提案に、私は顔を上げた。

でも千歳には彼氏(ケンさん)がいるし、そんな事したら私がお邪魔じゃないか。

「遠慮は無用よ。ケンなら大事な試験の勉強があるって言ってたからしばらくウチには来ないし。それに、親友のピンチに助けない友達がいます?」

「千歳……」

こういう時、頼りになる。

「ありがとう。じゃあ、どうにもならなくなったらお世話になります」

私は頭を下げた。

「そうならないと良いけどね」

千歳が口の端を少し上げてフッと笑った。

「うん。ありがとう」

千歳に背中を押されて、ちょっと前向きな気持ちになれたかもしれない。

(頑張ってみようかな)

多分、絶対。

上手になんて出来ないけど、少し努力をしてみようと思った。