きっかけは二者面談の時、


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まだ2年だったが、進路についての面談があった。




「私は芸能の道に進みます」

「そうか、それなら俺は応援するぞ」

「…え?」

「どうした?」

「先生、反対しないの?」

「…なんで反対するんだ?俺は楠木がそう決めたならそれでいいと思うぞ」

「そんなこと、初めて言われた…」



楠木は目に涙を浮かべながら


中学の時や1年の担任にはしっかり大学や専門学校を出とけと言われたこと、親御さんには芸能活動は高校生までと言われてること、

他にも楠木が所属している事務所内での悩みや、仕事での辛かったことなどを打ち明けてくれた。



楠木は凄く前向きで明るい子だと思っていたが、こんな表情を見たのは初めてで

話を聞くと周りの人に凄く気を遣って生きていて、きっと無理してるんだなと初めて気付いた。



正直俺は、小さい頃から芸能界にいる子だから周りに甘やかされてきて

実は裏ではわがままな子なんじゃないかとも思っていたからビックリした。




「楠木…俺には気遣うなよ?」

「え?」

「そんな生き方をしてたら本当に自分が何をしたいのか分からなくなる。だからこれからはせめて俺の前では弱音でも愚痴でもなんでも吐き出していいからな」

「先生…」





それ以降、親友の二宮が部活で一緒に帰れない日や、

久しぶりに登校した時など用事がなくても楠木は俺のところに来るようになった。



それに、他の先生方は楠木が登校すると

″かわいい″ だの ″テレビ見たよー″だの
すぐちやほやしてくるが、

俺はそういうのにあまり興味がないのもあって、芸能人だからといって持ち上げないところも気に入ってくれたそうだ。





そして、





楠木が初めて見せた涙に、俺はこいつを支えてやりたいと思った。



一教師として…




ではなく、1人の男として。