声だけで分かる。彼女は…由佳里は本気で変わりたいと思っている。


「ごめんなさい、妙な話をしてしまって。提出物を置いとくね。また明日。お大事に」


由佳里は机の上に提出物を置いて、部屋を後にした。


彼女がいなくなった部屋は静かすぎた。
「まだいていいよ」と、止めることも出来たのに、口が開かなかった。


由佳里は、俺が想像していたよりもずっと強くて、心がキレイだ。


何も無い自分が嫌で、変わろうという努力をしている。


俺なんかとは大違いだ。


この日を境に、俺は由佳里を見る目が変わった気がした。


雨はまだ降り続いていた。


彼女は曇天の中、傘をさして帰っていった。


それはまるで、暗闇の中で何ものにも染ま

らぬ、キレイな色をして真っ直ぐ天に伸び

ている、一輪の花のようだった。