あの日失った想い

「そんなこと………」





「あるんだよ。大丈夫。きっと家族の元へ帰ってくる。だから、心配すんなよ」





郁麻がそう言うと、彼のお母さんは座り込んで涙を流していた。






郁麻、本気なんだね。成功する確率は半分以下。下手したらあなたは世界から消える。




でも、私は止めないよ。だってあなたが決断したことだもんね。





「ねぇ、郁麻。私ね自分に取り柄が無いことを気にしていたの」





「知ってる」




「え?私、言ったっけ?」




「いや、お前が看病してくれたときに訊いた」