あの日失った想い

郁ちゃんが尊敬していたお父さんが不治の病にかかっていたの。


見つかったときはもう遅く、余命1ヶ月と言われていた。


でも、郁ちゃんのお父さんは長くは生きなかった。2週間とちょっとしかこの世界にいてくれなかった。



神様は、あたしたちに試練をして次々に与えてくる。


そんなの……卑怯だよっ。




お父さんが死んで、郁ちゃんは荒れたわ。



あたしが久しぶりに様子を見に行ってもすごくやつれていた。




あまつさえ、口も訊いてくれなかった。



大好きなお父さんの死を郁ちゃんは受け入れることが出来なかった。



目の下も酷いくまで、痩せていく郁ちゃんを見るのが苦痛だったの。




今でもその感覚が残っているの。