始まりは、入学式の日に話したあやねちゃん……綾音とトークアプリのIDを交換したことだと思う。


高校生になって1週間。


綾音と話すことも呼び捨ても慣れてきたし、クラスでも少しずつあいさつできる人が増えてきた。


そんなある日、唐突に、綾音がケータイをブンブン振り回しながらわたしの席にやってきた。


「楓莉っ、そういえばすごく大事なこと忘れてるよ、あたしたち!」

「大事なこと?」

「あたしたち、連絡手段がない!これ大事でしょ。ってことで、ハイ。交換しよ?」

「う、うん」


出会って1週間とはいえども、綾音のこの行動の早さにも免疫がついてきたわたし。


言われるがままにケータイを出すと、友達の欄に『あやね』が追加された。