入学式——。


それはいままでずっと目を背けてきた、゛中学卒業"を嫌でも受け入れなきゃいけないとき。


大人はみんな、高校が一番楽しかった、と言うけれど……




校門の前に一人でぽつんと立っているわたし、笹山楓莉。


今日から高校生になる。


新調したばっかりの制服はまだぶかぶかで。


ふわっと風にあおられた髪を抑える手は少し…


いや、かなり震えていた。


人見知りがひどくて、慣れないと上手に笑うことすらできない。


不器用なわたしが、高校生活楽しめるのかな。


青春とか、友達とか、好きな人…とか。


ちゃんとできるのかな…


これから始まる毎日への期待よりも、不安のほうが大きすぎて、手は汗ばんでくるし。


……もうすでに帰りたい…とか思っちゃったけど。


ふっと視界に入ってきた空はわたしの気持ちとは正反対に、真っ青で、澄んでいて。


うん……逃げちゃだめだし、頑張ってみよう。


リュックをきゅうっと握って、校門をくぐった。