「・・・気がついた?」
 「何があったか、覚えてる?」

そのベッドには、一人の男の子がいた。

 「どこか痛いの?」

彼の母は、心配そうに彼を見る。


彼には、目の前にいる人がわからない。

思い出せない。会った事なんてあるのか?

 「あなたは・・・誰ですか?」

母は、信じられなかった。

 「─何、言って…るの?」




愛は、走った。ただ、ひたすらに。

病院まで、もうすこし…

 「今いくよ、ユウキ」

ユウキと愛は、塾が一緒だった。

それから仲良くなり、2人は付き合い始めた。

愛が事故の知らせを聞いたのは、

 何時間もたった後だった。


何も持たず、スウェット姿で走る。



─周りなんて気にならない。

ユウキが…心配だった。


息を切らして、やっと病院に着いた。

教えられた病室は…。


 「あ…!」


あった。

そこにいたのは、ユウキのお母さん。

愛に気付いた母は、駆け寄ってくる。

 「あの、ユウキは…?」

 「命は助かったわ。でもね…」

そこまでいうと、ユウキの母は、涙を流し、

うつむいてしまった。

 「愛ちゃん、あの子とはもう…関わらないであげてほしいの」