翌朝。6:40。

いつも通り家を出て、隣である大城千華の家の前で彼女が出てくるのを待つ。


「あーくんおはよう」


「はよ」


千華が小走りで出てきた。


自身の通う私立の女子校の制服に身を包み、まっすぐで綺麗な黒髪を胸の辺りまで伸ばしている。


綾人より頭一つ分小さい彼女は、小動物のような雰囲気を持っている。



「あーくん昨日、遅くまで起きてたでしょ。何してたの?」


「携帯いじってただけ。千華こそ何してたんだよ、いつも寝るの早いのに」


綾人と千華の部屋は隣同士であり、部屋の明かりで互いに起きているかがわかる。


「りっちゃんと電話してたんだぁ」


「ほんと山本と仲良いな」


「春休みになったら晩ごはん食べに行く約束もしたよ」


幸せそうな千華の笑顔に、自然と綾人の頰も緩む。


「よかったな」


「うん!」




いつからだろうこいつを大切な存在だと思い始めたのは。