「まあ頑張れよ」


「うわ〜綾人のその余裕発言腹立つ〜」


拓巳は心底憎いという顔で綾人を睨む。


「まあまあ、そのうちできるよ」


「そのうちっていつなんだよぉ」


拓巳がごねて燐太郎がなだめる。


いつもの光景だ。


3人はそのまま学校を出る。


駅は学校の目の前にある。



「ちかちゃんについては明日たっぷり聞かせてもらうからな!」


「誰が話すか」


しかめっ面で食いつく拓巳を綾人はひらりとかわす。


改札で別れ、拓巳だけが綾人達とは逆方向の電車に乗る。


「で?」


燐太郎がにこやかに尋ねる。

ったくこいつは…。


タチの悪いやつと思いながら、綾人は何が、と問い返す。


「千華ちゃんのことに決まってるだろ?おれ最後に会ったの中学の卒業式だし」


駅は燐太郎の方が一つ遠いのだが、中学の校区が広かったこともあり、綾人と燐太郎は中学からの付き合いである。


「別に。何もねぇよ」


「ふぅん。毎朝一緒に駅まで歩いてるのに?」


「はぁ⁉︎何で知ってんだよ」


普段はあまり取り乱さない綾人だが、燐太郎は軽く予想を超えてくる。


「母さんが綾人のお母さんに聞いたって」


「ッチ、余計なこと言いふらしやがって」


「それで?」


燐太郎がしつこく問いただす。

綾人が本当に何もないと返すと、しばらく疑わしそうにしてからまあいいやとにこにこする。





あぁこいつの満足そうな笑顔を殴りたい