「千華…」


「何?」


「ずっと言おうと思ってたんだけど、俺さ…」


「千華〜!帰るよ〜!」


千華の母の声だ。


「はーい!…ごめんあーくん、言おうと思ってたことって何?」


首を傾げる千華に、綾人は言葉がつまる。


「…いや、…髪長いの似合ってるよ」


綾人の言葉に千華はキョトンとしてから、ぱっと笑顔になった。


「ありがとう」


くすくすと笑う千華にきまりが悪くなって、綾人は頰を掻く。


「んじゃまた月曜」


「うん」


玄関まで千華を見送り、部屋に戻る。


微かに残る千華の香りに、さっきまで千華が居たのだと改めて感じた。