「あそこは、神藤君の席だっけ」
容易く見破られてしまった。
私はあからさまに目線を逸らしたがひかりには通用しないようで
「何? 神藤君と何かあったの?」
食べることに集中しようとした私を覗き込み楽しそうに瞳を爛々とさせた。
「え、な、何もないけど」
そんなひかりに慌てて誤魔化す。
少しでも彼女に隙を見せたら根掘り葉掘り聞いてくるに決まってる。
「えー本当に?」
意地悪な笑顔を浮かべたひかりに頷く私。
それでもまだ納得はしないようで疑わしげに見てきた後一番の好物であるミートボールをお箸でつまむとぱくん、と口に放り込んだ。
「まあ那月がそう言うなら良いんだけどさ、少しでも何かあるなら行った方がいいんじゃない?」
ひかりは肉の塊を飲み込むともう食べ終わったのか弁当を片付け始めた。
目線は弁当箱だ。
すると何かを思い出したかのように目を大きく開いて顔を上げた。
「ちなみに神藤君昼休みはいつも屋上にいるよ」
屋上……。
私はお弁当を布に包むと椅子をひいて立ち上がった。
「ごめん、やっぱり行ってくる」
そう言った私の顔を見てひかりは一層楽しそうに笑った。
