春のあなたへ

その後もクラスメートの前で堂々と彼に話しかけるのは気が引けてチラチラと様子を伺うだけ。

彼も彼で休み時間になると直ぐさま教室を出て行き、授業が始まる直前に帰ってくるので避けているようだった。

結局そのまま昼休みに入ってしまい、またもや彼は教室を出て行ってしまう。

それをこっそり目で追うものの自分も教室を出る決心はつかなかった。

「那月! ご飯食べよー」

いつも通りひかりが弁当を持って隣の席に座ってくる。

この時ばかりは彼女の幼馴染も他の男友達と食べているので一緒ではない。

机をくっつけて手を合わせた。

けれど食べ始めても彼のことが気になってしまい空の席を気にしてしまう。

「……那月、今日落ち着かないね」

「えっ?」

そんな私をただ見ていたひかりはおかずを口に運びながらも不思議そうに言った。

その後私の目線を辿って彼の席を見たのだ。