とかく武家というものは、と岸島は、 「民が汗水流して納めた年貢を、さもさも当たり前がごとき調子にて湯水のごとく金子を使ってしまう」 これで民の心が分かると言われても、何の得心にもならない…というのである。 言われてみれば。 およそその通りであろう。 播州の商家から出てきた河合はふと、父親が同じような愚痴をこぼしていたことが頭によぎったのか、 「なるほど副長に申し上げてみる」 といい、席を立った。