「嘘…とな?」 「岸島さまはご存じではあらしまへんように存じますが」 というと番頭は、 「身請けのお代でございますよ」 と言った。 「身請け?」 「えぇ、島原の棗屋という郭の琴浦というお方で」 岸島はあきれたのか言葉がでない。 が、口をついて出たのは、 「局長はいったい、何人身請けすれば気が済むのやら」 という偽らざるところであった。