とりあえず金子がない事実を土方に伝えると、
「それはいつからなくなっているのか」
といい、帳簿の調査も始まった。
「だが積み立てだけはあるはず」
岸島が踏んだのはそこで、これは河合切腹の件のあと、使い込みや横領がないようにと岸島が定期的に調べてあり、まだ手付かずのはずであった。
ところが。
徳田からの報告は、実に驚くべきものであった。
「積み立てがほとんどない」
と言うのである。
しかも。
封の紙がついた金子箱そのものの数が足りないのである。
「これは…」
前回改めたのは半年前である。
つまり。
そこから半年の間に誰かが金箱を持ち出した者がある、ということになる。
岸島の奏上を受けた土方は、
「誰かが着服した」
と断言し、犯人を召し捕るよう命じたのであった。