「河合どの」

まるで蔵屋敷のときと変わらぬ様子で、岸島は河合を呼ばわった。

「いかがした、岸島くん」

「この三番隊の請け払いでありますが、いささか額が高く見受けられるように思いますが」

と岸島が指をさしたのは、三番隊の平隊士たちが島原遊廓へ登楼したときの金額である。

通常平隊士ならば月の手当てが十両つく。

「しかしながら」

とさされたそれは、四人で四両二分、つまり一人あたま一両二朱となり、日当と手当てを差し引くと、一人あたり二分は多い計算になる。

岸島はそれを指摘したのである。