「ともあれ、それがしは伊東どのではござらぬゆえ、実相は分からぬ」 と小野は言った。 一頻り語らってから小野が去ったあと、 「面倒なことになったな」 と岸島は小さく呟いた。 勘定方で小荷駄隊長だが、まだ監察も兼務である。 「…これは調べねばならぬのか」 もはや長年の相棒のようになりつつあった徳田に振ってみた。 徳田は、 「なれど調べるにも内偵は怪しまれましょう」 と、岸島が内偵に向かない気性であることを指摘した。