するとそのとき。 人影が廊下で動いて、 「これは下手をすると、山崎くんよりそろばんが上手いかも知れんな」 と、後ろから土方歳三が覗き込む。 ちなみに山崎とは今は監察の山崎丞のことをさす。 「…副長」 藤堂が下座に膝を滑らせた。 「いや、いい」 それより、と土方は、 「われわれの中でそろばんが出来る者は少ない。今も河合くんと酒井くんが主だが、まだ手薄だ。──岸島くん、君は働けるか」 「もとより、お役に立てるならば」 「よし、決まりだな」 帳面の岸島の名の上に朱で丸がつけられた。