無口な彼の愛し方

負けた悲しさから、みんな涙を流す。

あたしも泣きたいはずなのに、なぜかその場では泣けなかった。

コーチから労いの言葉を貰い、解散となった。

もう、このメンバー試合に出ることはない。

何とも言えない、虚しさだけが募る。


「麗香、男子のスコア頼まれてたんだっけ?」


泣いて腫らした顔で、瑞樹が尋ねる。


「うん」

「あたし達男子の応援してくから、帰りは一緒に帰ろう」

「うん」


瑞樹たちは、応援席のある上へと上がって行く。

試合まで、まだ時間はある。

あたしは人気の少ない階段の陰に、身を隠す。

その途端、さっきまで泣けなかったのに、涙が溢れてくる。

タオルで声を押し殺し、逆らうことなく泣いた。