無口な彼の愛し方

もう、着いちゃう。

家が見え、心の中でため息を溢す。

帰らなきゃいけないのに、帰りたくない。

でも、そんなこと充には言えない。


「家、ここ。ありがとう、送ってくれて」

「ん」

「楽しかった。また、今度ね」


充のことを見送ろうと思い、待っているのに充は動かない。


「有村くん?」

「最後の高校総体」

「うん」

「たぶん、決勝で当たる」


確かにいつも残る2校は、うちの学校と充のいる学校だ。

たぶん、それは今年も変わらないだろう。


「応援、してくれる?」

「もちろん、両方応援するよ!学校は違うけど、有村くんの学校の人たちも一緒に練習してきた仲間だもん」


どっちか1チームしか、上には行けない。

それが、勝負の世界。