私たちは分かれて、それぞれの教室に戻った。
「いやぁ、楽しかったねぇー!!」
「……うん、楽しかった。」
「今日は真琴、結構笑ってたしねぇー!」
全然気づかなかった……。
「……まぁね。」
私たちの教室でも片付けが行われていた。
「よぉし!!片付けパッパと終わらしちゃおぅー!」
もうあの服を着ないで済むことがよほど嬉しいみたい。
鼻歌しながら教室に入っていく楽を追って私も入ろうとした……
……ところで背筋が凍った。
足元から凍らされていくような、そんな感覚。
私は知っている……この冷たさを与えるものを。
これは……殺意。
それも私と同等かそれ以上の。
楽に悟られないようにそっと教室の扉から離れ、殺意のする方へ歩く。
場所はこの学校内……。
だけど、この学校にこれほどまでの殺意を出す人はいなかったはず。
隠していたんだろうか。
よく分からない焦りから急ぎ足になりつつ、ただひたすらあとを追う。
少し経ってから気づいた。
人が少なくなってる……。
クラスがある校舎じゃなく、こっちは普段は殆ど使われていない校舎。
「……誘われた?」
今更引き返すのも癪だし、歩き続けて辿り着いた先は……。
「……音楽室?」
そこはもう使われていない音楽室だった。
扉を開けて中を見回すと、教室の中心にポツンとピアノが置かれていた。
そして、ピアノの椅子に腰掛け鍵盤に触れる人物と、その横に伏せている黒い犬。
その3つが合わさるこの空間は、とても不思議な気持ちにした。
私の気配に気づいてこちらを見た黒犬。
そしてそれに気づき、鍵盤から顔を上げた人物。
「どうやら違う人が釣れてしまったようだ。」
釣れた……?
「……お前があれを……。」
「あれに気づくとは、君も相当な手練のようだね。」
色がない人。
それがこの人に対しての印象だった。
「……お前は、誰だ?」
「君は、私の名前を教えるに相応しい人物だ。
そうだろう?
…………white castle。」
その瞬間、背筋が凍った。
さっきの殺意なんかよりももっと……心の内側から。
声が出なかった。
この人を、怖いと思った。
「君のことは全て知っているさ。
表では剣城 真琴と名乗り、高校生として生活。
その反面、裏ではwhite castleの名で護り屋として活動。
他にも、君の弟が殺し屋に攫われたこと。
そして、君が女だということ。
そして……
初めて君が"人を殺した"時のこと。」

