遂に来てしまった今日。



「……楽?」



「もうダメ無理死にそう……。」



衣装を着てからずっと教室の隅で丸くなっている楽。



やはり相当なショックを受けたようだ。



「……普通に可愛いよ?」



そこら辺にいる女子よりは遥かに。



「僕は男だもん!!
可愛いって言われても嬉しくなーい!!」



そんな事言われたって……。










「おーおー、やってんなぁ。」



あ、何も手伝ってくれなかった使えない神城先生が来た。



「お前……会うたび俺のこと心の中で蔑んでねぇか?」



「……そんなこと、ない。」



危ない、勘づかれるところだった。



「てか、そこにいんのは今泉か?
お前何してんだよ……。」



「何で女装しなきゃいけないのさー……。
ねぇ、サボってもいい?」



「決めたのお前らだろうが。
それに、サボったら補習だっつっただろ。」



確かに、そんなこと言ってた。



だから私も出るハメになったんだっけ。



「でもー……。」











「あ、そういや……今泉。
お前……昨日のテスト赤点あったぞ?」



「え、嘘……でしょー……?」



「どっちみち補習だな。
だが、ここで一つ提案してやる。
補習受けるか、今日1日頑張って赤点なしにするか、どっちがいい?」



「………………頑張る。」



楽、バカだからハメられた……。



まぁ、やる気が出たんならいっか。



たまには良いことするね、神城先生も。



「お前、またディスっただろ?」



その言葉に、私は無言で首を横に振った。



「……じゃあ……頑張ろ、楽。」



「……うん。真琴も頑張ってねー……。」



流石にショックからは立ち直れなかったか。










「剣城。」



振り向くと、壁に背を預けながら煙草を吸っている神城先生。



ここ……教室なんですけど。



「問題の答えは見つかったか?」



思い出されるのは、初めて神城先生と会った日のこと。



"殻を作るなよ。
それはお前自身を苦しめるだけだ。"



自分の殻……か。



私は未だに答えを出せずにいる。



「まぁ、焦るこたぁねぇよ。
信頼出来る奴も出来たみたいだしな。」



そう言って颯爽と煙草を吸いながら出ていった。



この学校……煙草アリだったっけ?



「そろそろ学祭始まりマース!!
カウントダウン!!3ー、2ー、1ー……開幕!!」



さぁ、地獄の幕開けだ。