「なんかこれが置いてあったんだけどー……。」
楽が差し出してきたものを見た瞬間……俺の中で何かが変わった。
まるで……パンドラの箱がようやく開いたかのように。
兄さんの……指輪。
兄さんが死んでから、俺が預かって……それで……誰に渡した?
いや……そんなのもう分かってる。
【……どうか、した?】
【……俺は、みんなとだったから楽しかったんだ。
誰でもいいわけじゃない。3人だったから……。】
【……来都。シヴァ。
私を見つけてくれてありがとう。
私を見守ってくれてありがとう。
たくさんのごめんとありがとうを、今のあなたたちに一番言いたい。】
【私はずっと覚えているから。
みんなと出会ったこと。みんなとの時間。
みんなと交わした些細な言葉も。
こんな私に幸せをくれて……ありがとう。】
あぁ……俺の中にはこんなにも溢れていたんだな。
お前の言葉が。
どうしてずっと思い出せなかったんだろう。
俺にとってお前は……護りたかったやつで、かけがえのないやつで。
あの日、"必ず見つけてやる"って言ったのに……遅すぎたな。
もうお前は待ちくたびれているか?
もう俺たちに愛想が尽きたか?
「ちょっ、来都くんッ!?」「来都?」
俺は楽から指輪を受け取ると、走り出した。
なぁ、お前は今、どこにいるんだ?
どうせ高いところにでも登ってこの空でも見てるんだろ?
だったら……ちゃんと分かる場所に立ってろよ。
迎えに行ってやるから。
待ちくたびれたって怒られたら謝ろう。
愛想が尽きたって言われたら、また俺たちから抜け出せねぇようにしてやる。
新しい物語、始めるんだろ?
主役のお前がいねぇと、何も始まらねぇだろうが。

