誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。




あれから……ここには来ないようにしていた。



それが初めて3人と遊んだ日、たまたまここに入って、あのゲーム機を見て、少し思いにふけった。



画面の中にいるキャラクターたちは必死に格闘をしていて、気づくと私のゲージが半分を越していた。



少し気が抜けていたようだ。



「あれー?やっぱり真琴はゲームが弱いのかなぁ?
このままだと賭けは僕の勝ちだねー!」



「……それは、どうかな。」



あれからこっそり練習した。



自分にも必殺技が使えるように。



それを、アノ人との対戦で使う機会は結局なかったけれど。



今でも……手が覚えていて、無意識に動き始める。



それを呼応してキャラクターも動き始める。



「え……?あれ……え、ちょっ、えぇー!?」



相手のキャラクターが倒れた。



私の画面にはWINNERと表示されている。



楽の画面にはLOSERと表示されていることだろう。



「……俺の勝ち。」



「最後の何さー!僕でも知らないんだけどー!!」



頬を膨らましながら顔を出す楽。



「……裏技。」



「ずるいー!!今度教えてよねぇー!!」



「……分かった。」



息を吸いこみ、腰を上げる。



もう座ることはないと思っていた場所から。










「あーぁ……賭けに負けちゃったなぁ。」



「……楽、1つ聞いてもいい?」



「なぁにー?」



今は教えることは出来ない。



そんな簡単に教えられるほど、みんなの命は安くない。



「……もし、自分の敵が自分の知らない内に近くにいたら、楽はどうする?」



その問に、楽はすぐには答えなかった。



そして、少し考えたあと楽にとっての答えが出た。










「僕なら……答えは1つだよー。
誰かが傷つけられる前に潰す、かなぁー。」



そう言った時の楽の横顔は、これほどないまでに笑顔だった。