「ねぇ真琴?最後のゲーム、何かを賭けないー?」
「……いいよ。何を、賭ける?」
楽が指さしたのは格闘ゲームだった。
私にとって……とても思い入れのあるゲーム。
これだけは譲れない、かな。
「そうだねぇ……。
もし僕が勝ったら……真琴の頭を占めている何かを知りたい、かなぁー。」
ギクリとした。
やっぱり気づいていたんだ……。
でも、楽がそうくるのなら。
「……なら、俺は……保留にしてもらおうかな。」
「保留?」
「……今の俺には、何かを要求出来るほど欲がないから。いざって時に使わせてもらう。」
「フフッ、真琴らしいねぇー。
よし、じゃあやろっか!」
向かい合わせで腰を下ろす。
あまり来ていないのに、不思議と手に馴染んだボタン。
数えるほどしかやっていないのに、妙に愛着が湧くキャラクター。
どれもこれも、遠い過去となってしまった記憶の中に溺れているもの。
「準備はいいー?」
「……うん。」
画面に映るカウントダウンを見ていると、自然にあの日の記憶が息を吹き返す。
【相変わらず弱ぇんだな、真琴は。】
【変な必殺技とか使う呉都さんが悪い!!】
【それやんなきゃ勝てねぇんだから仕方ねぇだろ。】
【……大人気ない。子供っぽい。】
【腕がいいって言え。ほら、次はどうすんだ?】
【……もう1戦。】
【ハハッ、そうこなくちゃな!】
顔は見えなくても、向こう側でバカにした顔をしてるのがいつも想像出来た。

