その夜、夢を見た。
あの日の夢。
誰かと過ごす……最後の冬の日だった。
目の前に雪がチラついて私の視界を真っ白に染めた。
そして私の小さな手を優しく握るアノ人の手。
そこまでは鮮明に思い出せるのに……。
どうして……どうしてぼやけてしまうの……?
視界を染める白が……点々と"赤"に侵食されていく。
アノ人との時間が、埋もれていく……。
お願い……ッ、お願いだから消さないで……ッ!!
それは私の大事な思い出なの……ッ!!
表情も声も、その温かさも……全てを忘れたくないのに。
必死に手を伸ばすけれど……その手に触れることは、二度となかった……。
目を覚ますと、頬を涙が流れていた。
私はあの日のことで涙を流してはいけない……。
違う……、今日は色んな事があって混乱してるだけ。
あの日の夢を見たのも、きっとその影響。
だから……お願い。
まだ私の中からアノ人を……奪わないで。
「……ごめんね……呉都さん……ッ。」

