次の日、部活が終わり帰ろうと門を出たら3組の九条里美に呼ばれる。


「椿さん、ちょっと来てくれる?」
「九条さん、どうしたの?」
「いいから、早く」

麗子を、女子テニス部の先輩の所は連れて行く。3人の先輩達が腕組みをして待っていた。


先輩の前で乱暴に手を離され、前に転びそうになる。
「あっ、危ない!」と言った直後里美に背中を押されて転んでしまう。

手は擦り傷ができて、血が滲んでいた。
「痛い!」
麗子は立ち上がる。

「ふん!ざまあみろ!」
先輩達は、笑っている。

「なんで、わたしにこんなことするんですか?」
「は?なんで?よくそんなこと言えるよね。こういうことしといてさ!」

水族館で、蓮と麗子が手を繋いでる写真を乱暴に落とす。

その写真を見た麗子は。
「あっ!これ」

「やっとなんのことだか分かったらしいね、なんであんたが宇多野先輩と一緒にいるんだよ!」

「それもさ、手なんか繋いで、ふざけんなよ!宇多野先輩がテニス部皆んなの憧れなの知ってんだろ?」
「.........」
「なんとか言えよ!」

「一緒にいたのは、怪我して保健室まで連れてきてくれたから、そのお礼に」
「そんなの、ありがとうございますの一言でいいだろ」


「あんた、宇多野先輩に色仕掛けで迫ったんだろ!」
「違います!ただ、電話して話しただけです」

「なんで、先輩の番号知ってんだよ!」
「宇多野さんが、教えてくれたんです」

「あんたね、これ以上嘘言うとどうなるか分かってんの?」

先輩達の1人が麗子を突き飛ばす。
「なにするんですか!」
と、そこへ誰かが来る。

「フェアじゃないな、そのやり方。ずるいよね、4対1って」
「司くん!」

司は麗子の前に立つ。
「誰だ、あんた!」
「誰だっていいだろ。それより君達さ、今の自分の顔鏡で見てみなよ?すごい醜い顔してるよ」

「なにー!」
「皆んな、行こう!すげえむかつくな、こいつ」
「ほんと、ほんと」
怒りが頂点に達した女子達は、文句を言いながら帰った。

「麗子ちゃん、大丈夫?」
「うん」

「あんなのに、絡まれちゃってさ」
「ありがとう司くん。嬉しかった、来てくれて」
「別に礼を言われるようなことはしてないよ。麗子ちゃんの声が聞こえたから来ただけ」
「それでも、ありがとう」

「帰ろう!家まで僕が君を守るから」
手を繋いだ時、違和感を感じた司は手を離す。

「全然大丈夫じゃないよね、血が出てる。保健室行こう」
「大丈夫だよ、これくらい」
「だめだよ。ほら、僕も一緒に行ってあげるから」

保健の先生が手当してくれる。先生は、麗子が蓮、風太と一緒にいたのを知ってるので冷やかす。
「椿さん、モテるのね。3人の男の子から好かれるなんて」
「そんなこと」

「私が高校生の頃なんか、好きな子がいても話すらできなかったわ、恥ずかしくて」
「へえー、先生もそんなうぶな時があったんですね」

「あっ、今バカにしたでしょ?私結構可愛いかったんだから」
「先生......可愛いかったら、男子から酷薄されてたんじゃないですか?」

「そうなのよねえ、男子の見る目がなかったとしか言いようがないわね」
「あはは!先生面白いですね。これから頑張って下さい。彼氏探すの、私応援してますから。素敵な男性と出会えますように」

「あら、ありがと。頑張っちゃおうかしら、私」
「そうですよ。先生まだ若くて綺麗なんですから」
「まだは余計よ、椿さん」

「えへ」
「じゃ、失礼します」
「はい、気をつけてね」

麗子は歩いて行こうとして、司は麗子の手首を掴み。
「麗子ちゃん、待って!」
「ん?」

振り向いた瞬間、麗子の唇にキスした。
「ん...司くん」
「今の麗子ちゃん、すっごい可愛いかったから。我慢できなかった」

「もう、司くんは」
司と麗子は手を繋いで帰る。


麗子の家の近くに来て。
風太は腕を組んで、機嫌悪そうに立っていた。
「風太、ただいま」
「遅ーじゃねえかよ。それにあいつ誰だよ?仲よさそうに喋りやがって」
「同じクラスで、席が隣の司くんだよ」

「お前、手見せてみろよ。左手」
風太に見せる。
「麗子、なんだよこの絆創膏」
「ちょっと転んじゃって」

「お前また、転んだのかよ!」
麗子は本当のことは言わなかった。心配させんじゃねえって言うと思ったから。

「うん、ごめん。ドジで」
「麗子は、俺がいないとだめだな」
風太は、麗子を抱きしめる。

「風太、なんでそんなに優しいの?」
「は?俺に言わせるのかよ?」
「なんで?」
「なんでって、お前のことが好きだからに決まってんだろ!もう言わねえからな、バーカ」

もう一度麗子の口を塞いだ。
「傷が早く治るおまじないだよ。バーカ」

「風太!」
「まだ、なんかあるのかよ?」

「おやすみ」
「おう」
風太は麗子が家に帰って入るまでずっと見つめていた。