次の日、風太のクラスで。
「安良城くん、おはよう」
「おっす」
親しげに挨拶するのは、風太と同じ1年3組の九条里美。女子テニス部所属。

「あのさ、女子テニス部で噂になってるんだよね」
「なにが?」
「宇多野先輩が、椿さんお姫様抱っこしたこと」
「ふうーん」

「ふうーんって、心配じゃないの?椿さんのこと」
「別に、あいつは俺以外に興味ないだろ」


「たいした自信だね。みんな宇多野先輩狙ってるから」
「女ってさ、カッコイイ男に弱いよな」
「えっ、ああ、そうかも」

「今、俺のことカッコイイ男って認めただろ?」
「は?なに自惚れてんの!バカじゃない!」
里美は、心とは反対のことを言ってしまった。

「そのうちお前の心奪ってやるからな」
「は?どうしてそうなるのよ」
「テニス部の先輩って奴の、連絡先知っちゃったんだよ」
「えっ?ほしい」
「だめ!俺のこと好きになるまでは教えない」
里美は、風太を好きになる方法を考える。


その頃、麗子は司と一緒にいた。放課後、見せたいものがあるからと2人で寄り道する。
司といるところを風太は見てしまい、怒りを隠せない。


「司くん、どこ行くの?」
「綺麗なとこ」
「ん?」
麗子は首を傾げるばかり。司はすでに麗子の手を握っていた。


20分程
歩き目的地に着いた。
「さ、麗子ちゃん着いたよ」
そこは、夕陽が綺麗に見える川岸だった。

「ここ、夕陽が一番綺麗に見えるとこなんだ。麗子ちゃんにも見てもらいたくて」
「わあー、本当に綺麗」
「だろ?」
橋の上から夕陽を眺める2人。

「麗子ちゃん、あそこ見て!魚が泳いでる」
「えっ?どこどこ?」
司はその隙に麗子の唇にキスしてしまう。


「ん......」
突然キスされたので、麗子は目を開けたままだった。
「なんでキスなんか...」
「ごめん、僕じゃないんだ。口が勝手に動いたんだ」

「口が上手いのね」
「手繋いだ時、嫌がらなかったからキスも大丈夫かなって思ったんだ」
「前の学校でも、こんなことしてたんでしょ?」

「違う!こんなことするのは麗子ちゃんだけだから」
真剣な眼差しで、麗子をじっとみる。

司の真剣な眼差しで決心した麗子。
「今日だけだからね、司くんの彼女のフリしてあげる」
麗子は司の唇にキスした。

「麗子ちゃん...敵わないな。そんなことしたら、本気で好きに...」
麗子は、突然司の口を手で押さえた。
「それ以上は、まだ聞きたくない。まだ、知り合ったばかりだし」
「んんんんん」
司は麗子の手を降ろす。

「あっ、ごめん」
「帰ろうか、そろそろ。本物の彼氏が待ってるんじゃない?」
「司くん......」
麗子は、司とこのままもう少しいたいと思っていた。


麗子の家の近くに来たら、風太が機嫌悪そうに立っていた。
「お前、こんな時間までどこほっつき歩いてんだよ!」
「友達と一緒にいたの」
「ほんとか?」
「うん」
まさか、司と一緒にいたとは言えなかった。

「ったく、心配させんじゃねーよ。バーカ」
麗子を後ろから抱きしめた。
麗子の心はぎゅっと痛くなった。司のこと気になってるなんて絶対言えない。

「なに、黙ってんだよ。なんとか言えよ」
「うん、ごめん。風太好き」

風太は、麗子を振り向かせて。
「っ!お前こういうことしちゃうからな」
風太と麗子の唇が重なった。いつもより長く。

「んんん......風太。離れて、苦しいよ」
「俺はお前といつでも一緒にいたいんだよ、風呂入ったら俺の部屋来いよ」
「うん、行くね」
「よし、いい子」
麗子の頭をぽんぽんする。

風太が家の中に入るのをじっと見たいた。が、風太は振り返り。
「なにやってんだよ!早く家の中入れよ」
「うん」
麗子は素直に従う。

言い方は乱暴だけど、優しい風太が愛しくなった。
「でも、ごめん。司くんのことも気になるの」
麗子の素直な気持ちだった。