お昼を食べた後は、ホラーアトラクションに向かう。建物の中は薄暗い。

「風太!ちゃんと私の手握ってて」
「大丈夫だよ、ちゃんとお前のこと守るから」
「うん」

肖像画が年老いたり、部屋が伸びたり、気持ち悪いことばかりが続く。

「ねえ、風太?」
「なに?」
「気持ち悪い」

「えっ?お前大丈夫かよ、吐き気は?」
「違うよ、奴ら」
麗子は幽霊の人形を指差す。

「なんだ、そっちか。麗子そんな怖がりだったっけ?」
係の人の案内で乗り物に乗る。

これに乗って、アトラクション内を見る。
「なんか不気味だね。こういうところ、苦手」

風太は思いついて、麗子を怖がらせる。
「麗子!足元見て?なんか動いてるぞ、もぞもぞ」
「えっ、なに!やだあ、早くとって」
と両足を宙に浮かせる。

「なんにもいねえよ、バーカ。それより、麗子スカート短けえよ」
スカートの下に手を入れて足を触る。

「ちよ、ちょっと風太!嫌」
「いいじゃんか、誰も見てねえよ」
風太は麗子の口を塞いだ。

「ん......風太。こんなとこでキスなんかしたくない」
「なんでだよ?」
「だってムードないじゃん、ここ」

「薄暗いからキスするにはいいチャンスだと思ったのによ、つまんねえな」
「幽霊人形が出るところでなんか嫌だよ」

「女ってめんどくせー」
「風太......」

そんな話をしてると出口が近づく。乗り物を降りる時も、さりげなく手をとってくれる。
「ほら、手」
「ありがと」

建物の外へ出て、麗子は急に止まる。
手を繋いでいた風太はつまずきそうになる。

「なんだよ、急に止まんなよ」
「風太、ほんとに私のことめんどくさいっていう思ってんの?」
「は?誰がそんなこと言った?」
「風太」

「俺そんなこと言わねえよ」
「嘘!」
「お前のこと、束縛するくらい好きなのに俺がそんなこと言うと思うか?少しでも遅くなると心配して外で待ってるくらい麗子のこと愛してるんだぞ」

麗子は風太がこんなに興奮したところを見るのは初めてで圧倒されていた。

「なんとか言えよ」
「風太、そんなに私のこと......」
「当たり前だろ!俺の隣は麗子だけなんだよ」
風太の優しさに感動して麗子は涙を流す。

「また、泣いてやがる。泣き虫」
麗子を自分の胸に引き寄せる。

「俺はどこにも行かない。ずっとお前の隣にいるから、余計な心配すんじゃねえ」

風太は麗子の口を塞いだ。

その様子を、シンデレラと王子様が見て微笑んでいた。2人キスが終わって振り向く。

「うわっ!びっくりした」
風太はまた、シンデレラの美しさに一目惚れした。
「こりゃまた、綺麗なねえちゃんだ!」
麗子はすかさず、頭を叩く。
「風太!」
「いてえな」

シンデレラは微笑み。ある方向に腕を伸ばしている。そこには、かぼちゃの馬車が待っていた。この様子は、TTLにいる他のお客さんには見えていない。

どうやら、シンデレラは馬車に乗ってと言っている。王子様は馬車の前に座り、馬車を走らせてくれるみたいだ。


風太が先に乗り、麗子に手を差し出す。
「ほら、つかまれよ。姫」
「ありがと、王子様」
2人とも姫と王子になりきっているみたいだ。

風太は、シンデレラにも手を差し出す。
シンデレラの手を握ったことで真っ赤になる。シンデレラは、風太の頬にキスをした。


風太は開いた口が塞がらずシンデレラをじっと見つめた。麗子は面白くなくてむくれている。シンデレラは、麗子の手をにぎり首を横に振る。


女の子はそんな顔しちゃだめと言っているように。3人を乗せた馬車は、シンデレラ城に向かって空高く走って行った。

馬車を降りて、シンデレラと王子様に案内される。衣装室に着いて、風太と麗子は別々になる。

扉を開けると、メイド達が並んで麗子を出迎えてくれた。


「ようこそ、シンデレラ城へ。麗子様お待ちしてました。どうぞこちらへ」

「は、はい」
そこには、純白のウエディングドレスが何着も並んでいた。

それを見た麗子は。
「うわあ、なんて綺麗なの!私ウエディングドレスなんか着ていいのかな」
「なにをおっしゃってるのですか?麗子様。あなたの王子様がお待ちかねですよ。今から、あなたは風太王子様のお妃になられるのですよ!」

「えっ⁉︎わたしがですか?」
「そうです、麗子様以外にはおりませんので」

麗子は訳が分からず、メイド達がメイクからヘアスタイル、全てを行い綺麗にしてくれた。

ウエディングドレスに着替えた麗子は。
「ほんとに私ですか?」
「嘘じゃありません。麗子様です。風太王子様がお待ちですから行きましょう」

風太も正装して、紳士に仕上がっている。

「えっ⁉︎麗子?本当に?すげえ綺麗だよ。世界で一番お前が綺麗だ」

「ありがと、本当に風太?私の王子様になっちゃったんだね」

「これより、風太王子と麗子姫の結婚の儀を執り行います」

2人、国王の前で誓いの言葉を言う。
「誓いのキスを」

風太は、麗子のベールをそっとあげて。唇に優しくキスをした。

「ん......」

とそこで夢は覚めた。
「麗子!おい、起きろよ」

なかなか起きない麗子の頬を叩く。
「風太、もうちょっとキスして!」
起きない麗子をじっと見て唇にキスをした。

麗子はゆっくり目を開ける。
パニックになっている麗子に、説明をする風太。

「お前途中で気分悪くなって、うちの親父が迎えに来て。それからずっと俺のベッドで寝てたんだ。何時間も」
「じゃ、結婚式は夢なの?」
「そうみたいだな」

急に元気がなくなる麗子。
「今気分は?」
「大丈夫、すっかり良くなった」

「じゃ、いいよな。麗子、将来俺の赤ちゃん産んでくれるか?」
「えっ?ちょっと風太なに言ってんの?」

「お前、分かんねえのかよ。俺は真剣なんだけど」
「もしかして、プ、プ、プロポーズ⁉︎」
「そうだよ、もっと早く気づけよ。バーカ」
衝撃の言葉に返事ができなかった。

「お前なんとか言えよ?」
「風太が、私の旦那さんになるの?」
「嫌なのかよ?」
「違う!」

「じゃあ、もう一度聞く。安良城 麗子になってくれますか?」
「はい」

風太は、麗子に誓いのキスをした。
そのあとは、朝まで麗子を独り占めした。