部活が終わり、家に帰る途中麗子の携帯が鳴る。
「もしもし、椿さん?」
「はい」
「里美だけど、ちょっと話があるの。カフェハナミズキに16時来てくれる?」
「分かった」

カフェに入って、席に着く。
ホットコーヒーを注文して、話しだす里美。
「私さ、風太と付き合ってるんだよね。椿さん、それでいいの?」
「ちょっと待って、風太のこと呼び捨てにするほど仲いいの?」

「実はさ、私トラックにひかれそうになったことがあって、風太に助けられたんだよね」
「そんなことがあったんだ。それで風太の家に」
麗子を無視して、里美を自分の家に連れ込んだ時のことを思い出す。

「そう、風太の家で傷の手当てしてもらったの」
「今は、大丈夫なの?」
「全然。それから、お前のことほっとけねえって抱きしめられて、キスされちゃったんだよね」
「風太が?」

「そう。訳分かんなかったけど、私も風太のことほっとけなくなっちゃって」
「.........」
麗子は黙ってしまう。

「私、風太のこと奪っちゃうから。本気だよ。それでもいいの?ねえ!」
「そんなことしても無駄だから。今は風太とは距離置いてるけど、絶対私のところに戻ってくるって信じてるから」
「ふうーん、その自信どこからくるわけ?」
「小学生の頃からずっと一緒だったし。風太は私のこと好きすぎてるから。九条さんが何しようとあいつの心の中には私がいる」

店員さんがコーヒーを持ってきて。
「幼馴染だかなんだか知らないけど、風太は私のこと彼女だって言ったんだからね。あんたのことなんか忘れてるから」
「じゃ、これコーヒー代」
麗子はお金をテーブルに置く。

「ありがと、じゃあね」
里美は、お店を出ていく。

風太は絶対私のこと好きなはず。絶対...
窓の外をぼーっと見ていると、風太と里美が一緒に出かけるところを見かけた。

そんな2人を見て、麗子は自然と涙が出た。
でも、泣けたってことは私風太のこと好きなんだってホッとした。

カフェを出て、家に帰る途中。そこに司が待っていた。
「麗子!」
「司......」
「どうしちゃったの?なんかしんみりしてるけど」
「そう?」

「なんか元気ないなあ」
司は麗子の顔を覗き込み、キスをした。
「どう?少しは元気でた?」

首を横にふる麗子。
「おかしいなあ。良かったらお兄さんに話してくれる?」
「司、うちに来て」

「えっ、いいの?」
「お父さんもお母さんも親戚に用事あって2、3日帰ってこないから」
「そんな時に、僕こそこそお邪魔していいのかな?」
「私がいいって言ってんだから、いいの」
司の手を握り歩きだす。

「ちょっと、麗子強引だな。いけないことしちゃうぞ」
「いいよ」
「言ったな、覚悟しとけよ」

麗子の家に入り。
「綺麗にしてるな、家の中」
「ああ、お母さん掃除してたから」

「司ジュースでいい?」
「うん、カバン部屋に持ってこうか?」
「ありがと、階段上がって右の部屋ね」
「OK」

司は麗子の部屋に入る。
うわ、可愛い部屋。やっぱり女の子の部屋だな。部屋の中をキョロキョロ見ている。
「司、入るよ」

笑顔で写っている風太と麗子の写真を元に戻す。
「司、そんなにじろじろ見ないでよ」
「女の子の部屋、初めて入ったから興味あって」
「嘘...でしょ?」
「本当だって、いつもは男の部屋ばっかりだからさ、なんか新鮮」
「司、なんか楽しそう」
「楽しいよ、隣に麗子がいるから」

苦笑いをする麗子。
「この写真伏せて置こうね。今は僕だけ見ててほしいから」
あっ......麗子はふっと寂しそうな顔をしてしまう。

「僕がいるのに、寂しい?」
麗子は慌てて、下を向く。
「顔に出てるよ、麗子。彼氏に会いたいって」
「えっ、そんなこと...」

「その顔、反則だよ。僕が抑えられなくなる」
司は麗子の唇にキスをした。
「ん......」
「だめ、僕もう止まらないからね」

司は麗子の胸を触ろうとする。
「嫌!」
麗子のただ司を止める。

「どうしてさ!こうなること分かってて僕を誘ったんじゃないのかよ?」
「私は、やっぱり...」
「それ以上は聞きたくないよ。僕といてもキスしても、写真の空が忘れられないんだね」
「ごめん、司」

「謝るなよ、僕が惨めになる」
「ほんと、ごめん...」
「っ!分からない?僕とは友達でも君のそばにいたいって言っただろ?」

麗子は司の優しさに涙が出た。
「麗子、なんで泣くんだよ」
司は麗子を抱きしめた。

「僕達は、友達。君の1番になれないのは悔しいけど、それなら僕は君に幸せでいてほしいから、自分の心に嘘ついちゃだめ」
「司......」
「僕に気遣わなくていいから、幸せって思う人と一緒にいなきゃ」

「なんでそんなに優しいの?司のバカ」
「なんでだろう、麗子にだけ優しくしたくなるんだよ」
「これからも友達でいてくれる?」
「当然!麗子?」
「ん?」
「もう一回キスさせて?」
優しいキスが降りた。

「じゃ、僕帰ろうかな」
「下まで送ってく」
「っても、すぐじゃん」
「いいの」

司を見送る麗子。遠くには風太がが帰ってくるのが分かった。司と話している。

「おい!あんた、麗子になにした?」
「なんにもしてないよ、抱きしめてキスしただけだけど?」
「っ!なにー!」

風太は司をきっと睨む。
「友達としてね」
「なんで友達で、抱きしめたりキスするんだよ?恋愛感情がないとしないだろ、普通」
「僕、普通じゃないから。もうちょっと麗子ちゃんに寄り添ってあげなよ」
「っ!余計なお世話だ。2度と麗子に近づくんじゃねえぞ。分かったな!」

「はいはい、僕はどうせ2番目ですから。ご自由に」

司の言い方にキレた風太。
「とっとと行けよ!」
風太はそうとう機嫌が悪い。

「風太おかえり。話があるの」
「おかえりじゃねえよ。俺も話がある、ちょっと来い!」

麗子の手首を掴むが、麗子は動かない。
「なにやってんだよ!」
「うちの親、しばらく帰ってこないからうちに来て」
「分かった」

久しぶりに麗子を見た風太は、愛しくていますぐにでも触れたいと思った。