部活が終わり、テニス部の友達と一緒に帰る里美。
「あー、今日も疲れたね。美月」
「うん、また明日も頑張ろうね。私、こっちだから」


「うん、美月バイバイ」
「バイバイ」


友達と別れた里美。信号が青になり歩いていると。左からトラックがものすごい勢いで曲がってくる。


「きゃあ!」
「九条ー‼︎ あぶねー‼︎」


偶然にも、風太は少し後ろを歩いていた。里美と気づき。トラックと衝突を避けようと、里美を突き飛ばす。そして覆いかぶさるように里美を守る。


「きゃあー」
「大丈夫だ!」

トラックは、風太のギリギリを通り過ぎた。
あと数センチずれていたら2人とも大怪我をするところだった。


トラックが行ってから。
「大丈夫かよ、九条!」
里美の肩を揺らす風太。


「おい!」
「ん......」

ゆっくり目を開ける。
「えっ⁉︎安良城くん、どうしてここにいるの?」

立ち上がる里美を支えた。
「どうしてじゃねえよ、もう少しでトラックにひかれるところだったんだぞ。僕がいなかったら、今頃......」


そう思った里美は涙が出てくる。
「おい!なんで泣いてんだよ」
「命の恩人だね、安良城くんは」

「そうだよ、感謝しろよ。僕に」
風太は里美を抱きしめていた。
「あっ、安良城くん?ちょっと、ねえ」

「少し黙ってろよ、もうちょっとこのままでいさせろ」
「うん...」

「もう、お前のことほっとけねえ。僕のこころ奪いやがって、ふざけんな!バーカ」


風太は里美の口を塞いだ。
「えっ、ちょっと待って。椿さんは?」
「あいつの話しすんな!」


寂しそうな顔で下を向く。風太も里美の足元を見る。里美のスカートの下に血が見える。


「ん?お前、膝ちょっと見せてみろ!」
里美のスカートを少しだけめくる。

「きゃっ、なにするのよ。エッチ」
「ちげーよ。ひざ血が出てるじゃねえか。ちょっと来い!」


「え?どこ行くの?」
「僕の家な決まってるだろ、手当するんだよ」
風太は里美の手をぎゅっと握り歩きだす。

「それと安良城くんっていうのやめろよ」
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「下の名前で呼べ」

「えっと、なんだっけ?」
「お前、ふざけんなよ?」
「風太くんでいい?」

「ああ」
「じゃあ、私も言わせて」
「なんだよ」

「おいとか、お前とかやめて!ちゃんとした名前があるの」
「えーっと、あれ?」

「里美でいいよ」
「里美、今日から僕の彼女だ。分かったな」
「うん」


風太と里美が手を繋いで帰ってきて。麗子はこれから、出かけるところだった。

風太と麗子の目が一瞬あう。
「風太!」
麗子が呼んでも、風太は返事をせずに、家の中に里美を入れようとする。

「ちょっと、風太!無視しないでよ!」
里美は風太を気にする。
「ちょっと、風太!いいの?」
「いいんだよ」

里美の背中を押して家の中へ入ってしまった。

麗子は。風太のバカ。無視しなくてもいいじゃん、なんで九条さんと手繋いでるわけ?
と怒りがおさまらない。


そこは司から麗子の携帯に電話がかかってくる。駅で司と待ち合わせする。


風太の家では、母が待っていた。
「ただいまー」
「あ、おかえり風太。あれ?お隣の女の子は?」
「こんにちは、お邪魔します」
「こんにちは、いらっしゃい」

「里美、怪我してんだ。早く手当してくんない?」
母は、里美の傷を見て。

「あらあら、痛々しいわね。こっちいらっしゃい」
「はい、すいません」

「はい、これでいいわ」
ひざに絆創膏を貼る。

「どうしてこんな怪我したの?」

「横断歩道渡ってる途中でさ、トラックきて里美がひかれそうになったんだ」
「あらま、それは大変だったわね」

「僕、すぐ後ろ歩いてて。危ないって里美助けたんだ」
「そうだったの、里美ちゃん命拾いしたわね」
「ほんとに、命の恩人です。風太くんは」
「まあな」

「ところで、麗子ちゃんとはどうなってるの?あんなにラブラブだったじゃないの」
「今は話したくない、後でな」

「そう、分かった。母さんこれから買い物行ってくるから、ゆっくりしてってね。里美ちゃん」

「ありがとうございます。気をつけて」
「あら、ありがと」


風太と里美は、部屋で恋愛映画のDVDを観ていちゃいちゃするのだった。