「綺麗…」


 木の下で桜の花を見上げている一人の少女。

 色白の顔、胸辺りまでのばされたの焦げ茶色の髪、ぱっちりとした目を縁取る長いまつげ。

 そんな少女がライトで照らされた桜の下に居る姿はまるで…


「何かの絵でありそうだな。」


「…久瀬。」


 少女とあまり変わらない身長に茶色の短髪。

 タレ目がちな目は飄々とした少年の性格を表しているようだ。


「ま、立花がもっと美人だったらの話だけどな!」


「あんた相変わらずムカつく性格してるね。」


 2人は笑い合うとすぐそばにあったベンチに座った。


「…まだ待ってんのか。」


「うん。」


「岩崎が帰ってくる保証はないんだぞ。」


「帰ってくるよ。」


 あの日からずっと帰ってこない一人の少年。

 少年の親友であり、少女の想い人。


「岩崎は帰ってくる。」


「どうしてそう言い切れるんだよ。」


「うーん…女の勘?」


「あてにならねぇー!!」


 何を失礼なと少女は頬を膨らませたが直後それは笑顔に変わる。


「…ほら」


「なんだよ?」


「久瀬でも来るのに岩崎が来ないわけ無いじゃん。」


「どういう意味だよ。」


「それに、約束したでしょ。」


 3人でした約束。


 いつかまたこの場所で会おうと言った。


 「覚えてない?水泳一緒なんだけど…」


 そう言って困ったように笑った君に。


「会える気がするの。」


「それも女の勘かよ。」


「ううん。違う。」

 
 そう言うと少女は照れたように笑った。


 (君と私の運命の赤い糸が)

 (引き合わせてくれるかなーって)


「…なんだよ、ニヤニヤして。気持ち悪い。」


「う、うるさい!ニヤニヤしなんかしてないし!」


 桜の木は

 3人が再び揃うのを楽しみにするように揺れていた。