鬼が往く

最早、素手では誰も銀二を止められない。

「く…くそ…」

物陰に隠れ、猟銃を持った椎名が銀二を狙う。

これで頭を撃ち抜けば、流石の銀二の一溜まりもない。

「死にさらせ、沢渡!」

椎名が引き金を引き絞る。

その時。

「やめぇえぇぇえぇえぇぇいっ!」

突然の蛮声に、銀二も、椎名も、組員達も、紗智さえも動きを止めた。

事務所の入り口に誰か立っている。

白いスーツ、右手には長ドス、年齢は50くらい。

その全身から、今までのどの極道にもなかった威圧されるほどの貫禄を漂わせている。

彼の名は、明石 将臣。

この男こそ、関西最大規模の暴力団組織、関西明石組の五代目組長。

構成員1万人を束ねる暴力団組織の長である。

「派手にやっとるようやのぅ…オドレら。俺の耳にも入れんと、好き勝手さらしよって」