鬼が往く

紗智が銀二を追ったのは、あくまで銀二を死なせない為だった。

そして予想通り、銀二は池袋支部に居た。

が…「何て事なの」

紗智は愕然とする。

事務所内を埋め尽くす、累々たる重傷者の山。

軽く50人はいるだろうか。

事務所の奥の方から、怒声が聞こえてくる。

「次に死にてぇ奴は出て来い!」

銀二はたった1人で、事務所の組員50人以上を半殺しにしていた。

銀二自身、まだ相当なダメージが残っている筈だ。

事実、服の下にはまだ包帯が巻かれており、暴れたせいで出血していた箇所からは血が滲み出している。

しかしそれでも尚、凄まじい強さを発揮して、銀二は組員達をぶちのめしていた。

まるで手負いの獣…いや、鬼の如き凶暴性を見せ、銀二は事務所の全員を皆殺しにする勢いだった。